古い造花を手にして蘇る記憶 〜玩具から工芸品への進化〜
私が造花ブーケに魅力を感じた理由のひとつとして、造花のクオリティーが格段に上がった ことが挙げられます。
正直に言うと、私自身、造花に対してこれまであまり良い印象は持っていませんでした。
・安っぽい
・オモチャみたい
・ニセモノ
思い浮かぶイメージはネガティブなものばかりで、生花よりもあきらかに格下に位置付けていました。
でも、それもそのはずなんです。
少し前へ話が遡りますが、知り合いのお花屋さんから、「倉庫に造花が眠っているんだけど、処分するから欲しいのがあれば持っていっていいよ」と声をかけてもらいました。
さっそく倉庫に行くと、そこには棚いっぱいに積まれた段ボール箱があり、その中はすべて造花というではないですか。
「これはきっと掘り出し物があるだろう」
と期待を胸に膨らませ段ボール箱を開けます。
ところが、開けてガッカリ。
中から出てきたのは、子供騙しのような安っぽい作りの造花たちだったのです。
そのときに思いました。
「あぁそうだ、自分の知っている造花はコレだったんだ」
つまり、以前の自分が抱いていた
・安っぽい
・オモチャみたい
・ニセモノ
の造花です。
段ボール箱に眠っていたひと昔前の古い造花を目にしたとき、私のそんな過去の記憶が蘇ってきたのでした。
結局そこから持ち帰ったのは「何かに使えるかなぁ」といった程度のものを極少量、ほとんどは箱を開けただけで手にすることもしませんでした。
かたや、昨今の造花事情についてメーカー担当者からお話しを伺う機会がありました。
ご担当者曰く、高品質の造花は職人がとことん本物にこだわって作るのだそうです。
それは、花粉一つひとつに個体差をつけたり、花弁にうっすらと浮かぶ細い筋(花脈)を再現したりと、リアル感を出すためには効率の悪いことであっても手を抜かずに取り組んでいるのだと言っていました。
お話しを伺いながら造花を一本手渡されましたが、まさにそれは職人のこだわりによって作られた代物で、おっしゃる通りの再現性。色付けも繊細に施され、それはもう芸術品の域です。
造花を蔑んで見ていた自分が恥ずかしくなりました。
以上2つの話、ひょんなことから目にした古い造花の話と、職人技によって作られる芸術性の高い造花の話をしたわけですが、この2つのエピソードは、造花の印象をネガティブとポジティブの両極端に私を揺り動かします。
そして、私が造花に一切関心をもっていなかった期間に、造花の世界ではこんなにも進化があったんだなぁと、さながら浦島太郎のような心境に陥らせるのです。
造花に対してネガティブな印象を持っている人は、過去の私と同じように、造花への認識が段ボール箱の中の古い造花のままなのかもしれません。
21世紀を生きる今、造花もすっかり洗練されたものへ様変わりしています。
この先、芳香付き造花が開発されるのもそう遠くないことでしょう。
工芸品へと進化する造花のこれからが、ますます楽しみです。